「小林昭七先生を想う」 満渕俊樹教授

video10

Read in English

ToshikiMabuchi 満渕俊樹教授
大阪大学大学院理学研究科

 

小林先生と初めてお会いしましたのは、1972年に日本からBerkeleyの大学院に編入したときのことです。 Berkeley滞在中は、セミナーを開いていただいたり、ご自宅にある数学の本を貸していただいたり、数学的な相談に色々乗っていただいたり、何よりも数学者としての心構えを教えていただきました。そうした数学的なことのみならず、私的にも何度もご自宅によんでいただき、小林先生の奥様やご一家の方にも一方ならぬお世話になりました。

先生の指導のもとに1977年にBerkeleyでPh.D. をとり、西独のボンでの研究員生活を終えた後、日本に帰国しました。それ以後、先生のお目にかかるチャンスが少なかったのですが、1995年ころから日本の複素幾何のグループで毎年秋に菅平でシンポジウムを開き、海外の数学者を招いて講演や参加をお願いするようになりました。(このシンポジウムは今年で第19回目を数えますが、かって菅平に来ていただいた方の中にはY.-T. Siu 氏や C. LeBrun 氏を初めとして、幾人もの著名な方がおられます。)なかでも小林先生はこのシンポジウムにほぼ毎年欠かさず参加していただきました。このシンポジウムの講演はすべて英語で行われ、それを通じて我々が小林先生から教わったことも多々ありました。ちなみに、記念シンポジウムのホームページに掲げられている写真は、菅平で小林先生が講演されたのを板東さんが写真にとったもので、小生が最も好きな小林先生の写真のひとつです。

先生がお亡くなりになったということは厳然たる事実かもしれませんが、我々としては先生の数学に対する強い想い、そしてその志を継いで数学に真摯に取り組んでいきたいと思っています。

最後に、この小林先生記念シンポジウムの組織委員長をつとめられました落合卓四郎先生、および組織委員の方々、また偲ぶ会を組織して色々とお骨折りいただきました前田吉昭様、田中真紀子様、三上健太郎様、および世話人の方々、そしてこの偲ぶ会に御参列いただきました皆様方に小林先生の弟子の一人として心より感謝申し上げます。