「義兄との思い出」 芦澤明子

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AkikoAshizawa芦沢明子、義妹
撮影監督

 

57年前、<世界の頭脳>といわれている昭七さんとの結婚が決まったとき明治生まれの父は喜びのあまり知人や近所の人に自慢しまくり、母は緊張しまくっていました。お会いしてみるととてもリベラルで思いやりのある方で芦澤家の親戚の事までいろいろきずかってくださいました.冗談好きの姉<幸子>と母の終わりのないようなだらだら話を何時もニコニコして聞いておられました。特に母とは琴線があったのでしょうか晩年の母の事を大切にしてくださいました。

私は、映画の撮影関係の仕事を生業にしておりますが、ある時昭七さんが、<明子さんの仕事もぼくの仕事も美をもとめるということでは、同じなんですよ>と、ありがたくも、もったいないようなことを言ってくださいました。今にしてみればその言葉は、私にとって何よりの励みとなっております。

昭七さんはこれからやりたい事が山ほどあったことでしょう。手術後わざわざ渋谷の東急本店に一人で行かれ素敵な帽子を買ってこられました.私は後に、渋谷駅からその道をたどりながら昭七さんのそんな思いを感じました.見果てぬゆめとなりましたが、そんな思いや夢を基金という形でリベラルに若い人に手渡すことができたら、昭七さんもどんなにお喜びかと思います.基金の立ち上げやこの会の企画運営などに多くの先生方や若い研究者の方々にご尽力していただいた事をこころから感謝申し上げます。